ARABIA FIN 100 Mugs
ARABIA は1873年にフィンランドのヘルシンキ郊外にあるアラビア地区で創業した、フィンランドで最も歴史あるテーブルウェアブランドのひとつです。1990年に iittala の傘下になりましたが、今でもフィンランドにとどまらず世界的にも広く知られ、長年にわたりテーブルウェア分野で大きな影響を与えています。

2017年のフィンランド独立100周年を記念して、ARABIA は10種類の限定マグカップコレクションを発表しました。10年ごとに1つずつ選ばれたパターンを通して、フィンランド100年のデザインやテーブルセッティングの歴史をたどることができます。
その選考方法は一般投票によるもので、ARABIA を愛用してきた人たちによって、数あるパターンの中から選び抜かれた9種類のモチーフが再び描き直され、マグカップにプリントされました。
最後の2000年代を飾る10番目は、Heini Riitahuhta がデコレートした、Huvila という、淡いピンクの草花をモチーフにしたパターンです。
それぞれのカップの底面には、100周年を象徴する特別なバックスタンプが刻印されています。



Isak 1914
20世紀の初めに、アラビアの食器は、フィンランドのロマン主義の影響を受けたシンプルな装飾品と優美なデザインで装飾されました。パターンには、Adolf、Arne、Henrik、Into、Isak、Jalo、Jonas、Kullervo、Oiva、Toivoなどの男らしい名前が付けられました。パターンは銅版に手で彫刻されており、Isakはそのようなパターンの1つでした。



She-fo 1926
1926年に誕生して以来、今なお色褪せることのない She-fo をデコレートしたのは ARABIA 装飾部門の創設者である Greta-Lisa Jäderholm-Snellman (1894-1973) です。1921年から1937年の間、陶芸作家として勤務していた彼女は、パリでの暮らしを生かし、アール・デコ様式を取り入れた手描きの作品を発表しています。
約40年 (1926〜1964) もの長きにわたり愛され続けた She-fo は、時代に合わせて少しずつその姿を変えてきました。その中でも、カップの内側にまでびっしりと描かれた デミタスカップ は、効率が重視される今の時代ではめったに出会えない、贅沢な逸品です。



Myrna 1937
Myrna は、ARABIA 美術部門のディレクターを務めた Olga Osol(1905–1994)が、モデル AX のために1937年にデコレートしたパターンです。Myrna は戦前の日本でも絶大な人気を誇り、Olga Osol が敬愛していたアメリカの映画スター Myrna Loy にちなんで名付けられました。クラシカルな佇まいのモデル AX にふさわしい、優雅な花柄と金の縁取りが施された豪華なデザインの Myrna は、ARABIA のラインナップに上品な華やかさを加えました。
多くの人々を魅了し続け、約70年(1937〜2005)にわたり生産された、ARABIA を代表するロングセラーシリーズです。



Suomen Kukka 1941
Suomen Kukka は “フィンランドの花” という意味で、ノルディックの精神を象徴するかのように、力強さと繊細な美しさを巧みに表現しています。
オリジナルの食器は1936年に Rienhard Richter が手がけた AS-model です。残念ながらデザイナーの詳細は判明しませんでした。



Hattara 1954
Hattara は、イヤープレートを多く手がけた ARABIA で最も有名なデコレーターの一人、Raija Uosikkinen (1923–2004) が、Kaj Franck のモデルBのためにデコレートしたパターンの一つです。独特な世界観を持つ Hattara は、1961年に米国サクラメントで金メダルを受賞し、彼女を象徴するデザインの一つとして知られています。
Hattara とはフィンランド語で “綿菓子” を意味します。Hattara の ヴィンテージ では、風に舞う綿毛を思わせるような大胆な余白が印象的です。選ばれた10のパターンの中で、Hattara は時代をそっと塗り替えるような存在だったのではないか――そんな気さえしてきます。



Pastoraali 1965
1960年代後半からの Pastoraali シリーズで代表される、豊富で確立されたアラビアのパターンデザイナーである Esteri Tomula (1920-1998) は、細部の豊富なスタイルを持っていました。それは、植物の中に人間の文字を含んでいます。その後、新しいシルク印刷技術を使用して明るい色を使用することができ、Pastoraali パターンには豊かな青が選択されました。



Esteri 1973
1973年の ARABIA 創設100周年を記念して、Esteri Tomula (1920–1998) は、カップ&ソーサーに大胆な花模様のパターンをデコレートしました。プレートとしても使える大きめのソーサーとの相性は抜群で、ヴィンテージ を目にするたび、思わず見惚れてしまいます。当時、青と茶色の2色で発表されたこの花柄は Esteri と名付けられ、ARABIA の歴史を語る上で欠かせないパターンのひとつとなりました。
フィンランド独立100周年記念マグカップの選考においても、Esteri は幅広い世代から支持され、記念マグカップ5個セットのパッケージデザインにも採用されています。



Timbua 1987
アメリカ出身のデザイナー Howard Smith(1928年生まれ)は、1987年に Timbua をデコレートしました。彼はペンシルバニア美術アカデミーでファインアートを学んだ後、1962年にフィンランドへ移住。ヘルシンキのファインアート研究所では Kaj Franck のアシスタントも務めました。1986年から1995年まで ARABIA にゲストアーティストとして在籍しています。彼の代表作である Parvi Lisa は、私にとって憧れの作品のひとつです。
古代の象形文字からインスピレーションを得てデザインされた Timbua は、Howard Smith が得意とする白と黒のコントラストで表現された、強い存在感を放つパターンです。



Bebop 1992
Heikki Orvola (b. 1943) は、1987年以来、アラビアの芸術部門で働いています。オルボラは、ブルース、バラード、ビーバップといった音楽を統一要因とする異なるパターンをデザインする任務を与えられました。破壊的なジャズのビバップは、1992年のビーポップのコーヒーと紅茶に影響を与えました。それは全体を通して金で飾られ、豪華さと1990年代のスタイルの両方を表していました。



Huvila 2017
Heini Riitahuhta (b. 1975) は、2003年にアラビア芸術学会に加わりました。Huvilaは、リリタフッタの独特のイラストレーションスタイルの花のテーマです。それは1920年代のスタイルを反映したエレガントで洗練されたパターンです。その一方で、手描きの技法はフィンランドの100周年である2017年に現代的な感覚を与えます。

