ARABIA Paratiisi
瑞々しくエキゾチックに描かれた植物、そこに気品さまでも纏った ARABIA の Paratiisi は、1969年にフィンランドの陶芸作家、奇才 Birger Kaipiainen によってデコレートされた名作です。
彼の作品は、まさに絵画そのモノ。永きにわたり名作と呼ばれ続ける絵画のように、美しさの中に怖さが共存している、まさにリアリズムの境地とも言える作品が多く発表されています。そんなアート性の強い作品を生みだす彼にとって、自分の世界を食卓で楽しめるように表現することは凄く大変な作業だったのではないでしょうか。
Birger Kaipiainen は、数多くの美しいウォールプレートを残しています。そんな彼にとってオーバルプレートはまさにキャンバス。絵画を描くように陶器に命を吹き込んでいたのではないでしょうか。実際に Paratiisi のデザインもオーバルプレートから開始したと言われています。そして生み出されたパターンは、カップ&ソーサーやチュリーンなど様々な陶器にデコレートされ、今では世界中の食卓やカップボードを彩っています。
楽園
Paratiisi はフィンランド語で楽園を意味します。同時に発表されたイエローの Aatami とホワイトの Eeva があることから、皆さんもご存知のアダムとエヴァが住んでいた楽園を表現した作品だということがわかります。
美しさの中に怖さをも共存する彼の世界をテーブルウェアとして堪能できるのはまさに奇跡。そして、癖になる彼の世界は知らず知らずのうちに、楽園にいるかのような錯覚を覚えてしまうのです。
愛され続けるヴィンテージ
Birger Kaipiainen のアートプレートの多くは数十万円で取引されているため、ビングに飾ることはなかなか難しいかもしれません。特に誰もが惹かれるであろう素敵な作品は出会うこと自体が貴重。偶然目の前に現れたとしても展示品の場合が多く、販売されていたとしてもすぐに決断ができるような価格ではありません。だからこそ、Paratiisi の存在は私にとって意味があるのです。一点モノのアート作品とは違い、Paratiisi のヴィンテージは比較的手に入りやすい価格で取引されているからです。
ビオラのバックスタンプ
他のヴィンテージ食器と同様 Paratiisi もまた、バックススタンプを確認することで製造時期を特定することができます。Birger Kaipiainen 本人の鋭い目によって監修され、一番最初に生まれた Paratiisi には、彼のお気に入り花であるビオラのバックスタンプが刻印されています。ビオラのバックスタンプは半世紀に渡り大事にされ愛され続けた証。私はそんなビオラの Paratiisi を見つける度に幸せな気分になり、そして我が家に迎えたくなるのです。
オリジナルに忠実に再現されたリニューアル
製造開始当初のオリジナル Paratiisi は、1969年に発表されてから1974年まで生産さました。デザイナーの Birger Kaipiainen の原点とも言える Paratiisi のオーバルプレートは、最初の生産中止とともに姿を消します。当時の Paratiisi は今では非常に珍しく、トレードマークとも言えるビオラのバックスタンプに出会うことは私にとってとても嬉しいことです。
あまりの人気から1988年に生産が再スタートします。このとき製造上の理由からでしょうか、オーバルプレートは消え円形のプレートにリニューアルされるのです。現代に生きる我々からすると残念なことに思えますが、一度姿を消すことにより希少価値がつき、今ではコレクターの収集欲を後ろ盾する形となり、オリジナルがより大事にされ、現存することに繋がっているのではないかと思います。
一度は姿を消したオーバルプレートも2009年に復刻が決定!当初の使いやすさを今でも楽しむことができるようになりました。オリジナルに比べサイズや色合いに違いがあるものの、華やかさは当時の雰囲気を残しています。ヴィンテージに比べ個体差も無くなりはしましたが、そのおかげで安定して生産できるので、今では比較的手に入りやすい価格で販売され、世代を越えて愛され続けています。
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